オフィスに新規でビジネスフォンを導入したり、レイアウト変更で移設・増設したりするとき、電話工事が必要になります。基本的には、専門の工事業者に依頼しますのですが、その都度依頼するのも費用も掛かり、自分たちで工事してしまおうかな、と考えることもありますよね。
しかし、結論としては電話に関する工事は「資格」が必要となり、素人が自由に行うことはできません。
簡単な、電話線やLANケーブルの接続は行うことはできますが、それ以外の工事に関しては、「工事担当者」という資格が必要となります。
その工事担当者の資格には種類が様々あり、有している資格によって作業できる範囲が限られてきます。
そこで今回は、電話工事に必要な資格「工事担当者」に関しては、その種類や資格をとるために必要な知識などをご説明いたします。
1. 電話工事に必要な資格「工事担当者」とは?
まず 工事担当者は、総務省所管の法令で定められた国家資格であり、昭和60年(1985年)電気通信事業法の施行と同時に制定されたものになります。電気通信回線と端末設備などを接続するために必要とされる資格です。
また、工事担当者の取得を推奨している企業も多く、より満足度の高いサービスを顧客に提供するための努力を続ける企業は、「安全で確実」な工事を行う企業として、信頼性を広く社会にアピールしているようです。
工事担当者を取得すると、アナログ電話回線やデジタルデータ回線(IPネットワークを含む)などに、様々な端末設備などを接続する工事が行え、または監督する役割を担うことができます。
例えば、主装置から各電話機までの電話線や、LANケーブルの配線作業や、差込口を増設・移設する作業などができるようになります。具体的な工事の範囲は、資格の種類によって異なりますので、次の項で種類について詳しく見ていきましょう。
2. 工事担当者の資格の種類は「AI種」と「DD種」に分けられている
工事担当者の資格者証の種類は大きく、
・AI種(アナログ回線)
・DD種(デジタル回線)
と、2つに区分され、それぞれに第1~3種まで設けられています。また、すべての工事の範囲を含むAI・DD総合種が設けられています。詳しくは『一般財団法人 日本データ通信協会 電気通信国家資格センター』の内容を参照してご紹介いたします。
AI種(アナログ回線)
全国的にサービス提供されている基本的なサービスであり、かつ、技術・サービスの類似したアナログ電話及び総合デ
ジタル通信サービス(ISDN)に関わる端末設備等の接続を工事の範囲としています。主に接続する電気通信回線の規模に応じて、第1~3種が設けられています。
AI第1種
全てのアナログ電話回線及び全てのISDN回線への接続工事が、工事の範囲に含まれます。AI種の工事であれば、回線数や工事の規模等に制限はありません。
AI第2種
アナログ伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(端末設備等に収容される電気通信回線の数が50以下であって内線の数が200以下のものに限る。)および、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事(総合デジタル通信回線の数が64kbps換算で50以下のものに限る。)
AI第3種
アナログ電話、ISDNいずれの場合も、回線の数は1に限定されており、主に家庭内またはこれと同等規模の接続工事が想定されます。なお、回線数が1であっても、端末については技術基準の範囲内であれば複数の台数が設置可能。
DD種(デジタル回線)
ブロードバンドインターネット、広域イーサ等のデジタルデータ伝送サービスに関わる接続を工事の範囲としています。
電気通信回線の速度(規模相当)またはサービスのグレード等に応じて、第1~3種が設けられています。
DD第1種
ISDNを除く全てのデジタル回線への接続工事が対象となります。主に、光ファイバーを用いた100メガビット/秒を超える高速・大容量の電気通信回線への接続工事が、DD第1種特有の工事例として想定されます。
DD第2種
ISDNを除く100メガビット/秒以下のデジタル回線への接続工事が対象となります。小・中規模の事業所内で行われる接続工事が主になることが想定され、DD第3種とは異なり、インターネット接続以外の用途を持つ回線(IP電話ネットワーク、広域イーサネット、DDX等)への接続工事が可能となります。
DD第3種
ISDNを除くデジタル回線への接続工事のうち、主に家庭、SOHO向けの回線速度が1ギガビット/秒以下のインターネットに接続するための小規模な工事が対象です。
ADSL等のメタリックケーブルを用いた回線のほか、FTTHのような光ファイバーを用いた回線への接続工事も可能ですが、主としてインターネットにアクセスするための工事に限定されます。したがって、回線速度が1ギガビット/秒以下であっても、IP電話ネットワークに接続されるボタン電話装置などを接続する工事には、DD第2種以上の資格者証が必要となります。
AI・DD総合種
AI第1種とDD第1種の両方の工事の範囲を含み、工事担任者の全ての工事の範囲を包含します。
なお、AI第1種とDD第1種の資格者証を両方取得した場合は、申請により本資格者証を取得できます。
以上の様に、取得する資格によってできる工事の範囲が定められています。
では、資格を取得するにはどのような知識が必要になるのか?について、次の項で詳しくご説明いたします。
3.工事担当者の資格をとるために必要な知識
工事担当者の資格を取得するための知識として、まずは実際の試験科目を理解しておく必要があのますよね。
では、実際の試験科目を見ていきましょう。
工事担当者の試験科目は、
➀電気通信技術の「基礎」
電気工学および電気通信の基礎知識が問われます。
➁端末設備の接続のための「技術及び倫理」
各種端末設備の機能や、ネットワークの仕組み、情報セキュリティ、接続工法などが問われます。
➂端末設備の接続に関する「法規」
接続工事に関係する法令が問われます。
と、大きく3つに分けられています。具体的には、全て紹介すると長くなってしまうので、個別にお調べ下さい。
次に、科目免除制度というものが用意されています。
➀認定学校で認定に係る教育課程を修了された方
「電気通信技術の基礎」が免除
➁科目合格の方
「基礎」「技術及び理論」「法規」のうち、1つまたは2つの科目が合格点を得ると「科目合格」となり、3年間、合格した科目の試験が免除されます。
➂すでに工事担任者資格などを持っている方
工事担任者資格や、一定の無線従事者資格などを持っている方は、一定の試験科目が免除されます。
以上の様に、電気通信に関する全般的な知識が必要となり、試験は毎年、年2回、春(5月)と秋(11月)に行われています。
4. まとめ
電話工事は、基本的に工事担当者の資格を有している人のみが作業できます。また、前述の通り、工事担当者の取得を推奨している企業も多く、就職や転職には役立つ資格になっています。
電話工事を工事業者に依頼する場合、もちろん資格を持っている作業員が作業していると思いますが、念のために見積もりを提出してもらう際に工事担当者の有資格者が作業を行うのか確認してみると安心ですね。
この記事へのコメントはありません。