電話工事に従事するためには、「工事担当者」の資格取得は必須であり、かつてのアナログ回線から、IP通信の普及によってブロードバンドの時代へと突入した現在、ネットワーク接続技術者として情報通信に精通した「工事担任者」の需要は高まる一方で、就職や転職といったものには有効な資格となっています。
資格保有者は、これからの情報通信社会を支える技術者として、活躍の場はますます広がるでしょう。そこで、気になるのが資格試験の「難易度」ではないでしょうか?ここからは、電話工事に必要になる資格「工事担当者」の試験内容やその難易度についてご説明いたします。
1. 電話工事に必要な資格「工事担当者」は7つに区分されている
工事担当者は、総務省所管の法令で定められた「国家資格」であり、昭和60年(1985年)電気通信事業法の施行と同時に制定されたものになります。電気通信回線と端末設備などを接続するために必要とされる資格です。この工事担当者資格を取得すると、情報通信の設備工事ができるだけでなく、保守や管理、工事の監督などの仕事にも携わることがきます。
その工事担当者の資格者証の種類は大きく、
・AI種(アナログ回線)
・DD種(デジタル回線)
と、2つに区分され、それぞれに第1~3種まで設けられています。また、すべての工事の範囲を含むAI・DD総合種が設けられています。具体的には、
AI種 :AI第1種、AI第2種、AI第3種
DD種 :DD第1種、DD第2種、DD第3種
AI・DD総合種
と、7区分があります。
AI種はアナログ回線、ISDN回線の工事、DD種は光回線などのデジタル回線の工事、AI種は回線数、DD種は伝送速度により3種に区分が分かれています。また、双方の1種を組み合わせたものが総合種で、AI1種とDD1種を取得すればAI・DD総合種になります。
2. 「工事担当者」7区分の試験内容と難易度を理解しておこう
次に、実際の工事担当者の試験科目は、
①電気通信技術の「基礎」
電気工学および電気通信の基礎知識が問われます。
②端末設備の接続のための「技術及び倫理」
各種端末設備の機能や、ネットワークの仕組み、情報セキュリティ、接続工法などが問われます。
③端末設備の接続に関する「法規」
接続工事に関係する法令が問われます。
と、大きく3つに分けられており、さらに7つの区分ごとに試験内容が分かれ、難易度も当然異なります。
それでは、実際の試験内容とその難易度の基準として、各試験の合格率をご紹介したいと思います。
ちなみに、試験は毎年、年2回、春(5月)と秋(11月)に行われており、各科目の得点が、100点満点中60点以上で合格となります。受験料は、8,700円となっており、その他に全科目(基礎、法規、技術)の免除申請料は5,600円が必要になります。
「AI第1種」 近年合格率:29.3%
全てのアナログ電話回線及び全てのISDN回線への接続工事が、工事の範囲に含まれます。
AI種の工事であれば、回線数や工事の規模等に制限はありません。
基礎:・電気工学の基礎
・電気通信の基礎
技術:・端末設備の技術
・総合デジタル通信の技術
・接続工事の技術
・トラヒック理論
・情報セキュリティの技術
法規:・電気通信事業法
・有線電気通信法
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律
・電子署名及び認証業務に関する法律
「AI第2種」 近年合格率:17.1%
アナログ伝送路設備に端末設備等を接続するための工事(端末設備等に収容される電気通信回線の数が50以下であって内線の数が200以下のものに限る。)および、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事(総合デジタル通信回線の数が64kbps換算で50以下のものに限る。)
基礎:・電気工学の基礎
・電気通信の基礎
技術:・端末設備の技術
・総合デジタル通信の技術
・接続工事の技術
・トラヒック理論
・情報セキュリティの技術
法規:・電気通信事業法
・有線電気通信法
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律
・電子署名及び認証業務に関する法律
「AI第3種」 近年合格率:32.9%
アナログ電話、ISDNいずれの場合も、回線の数は1に限定されており、主に家庭内またはこれと同等規模の接続工事が想定されます。なお、回線数が1であっても、端末については技術基準の範囲内であれば複数の台数が設置可能。
基礎:・電気工学の初歩
・電気通信の初歩
技術:・端末設備の技術
・総合デジタル通信の技術
・接続工事の技術
・情報セキュリティの技術
法規:・電気通信事業法
・有線電気通信法
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律
「DD第1種」 近年合格率:16.7%
ISDNを除く全てのデジタル回線への接続工事が対象となります。
主に、光ファイバーを用いた100メガビット/秒を超える高速・大容量の電気通信回線への接続工事が、DD第1種特有の工事例として想定されます。
基礎:・電気工学の基礎
・電気通信の基礎
技術:・端末設備の技術
・接続工事の技術
・ネットワークの技術
・情報セキュリティの技術
法規:・電気通信事業法
・有線電気通信法
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律
・電子署名及び認証業務に関する法律
「DD第2種」 近年合格率:9.2%
ISDNを除く100メガビット/秒以下のデジタル回線への接続工事が対象となります。
小・中規模の事業所内で行われる接続工事が主になることが想定され、DD第3種とは異なり、インターネット接続以外の用途を持つ回線(IP電話ネットワーク、広域イーサネット、DDX等)への接続工事が可能となります。
基礎:・電気工学の基礎
・電気通信の基礎
技術:・端末設備の技術
・接続工事の技術
・ネットワークの技術
・情報セキュリティの技術
法規:・電気通信事業法
・有線電気通信法
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律
・電子署名及び認証業務に関する法律
「DD第3種」 近年合格率:30.1%
ISDNを除くデジタル回線への接続工事のうち、主に家庭、SOHO向けの回線速度が1ギガビット/秒以下のインターネットに接続するための小規模な工事が対象です。ADSL等のメタリックケーブルを用いた回線のほか、FTTHのような光ファイバーを用いた回線への接続工事も可能ですが、主としてインターネットにアクセスするための工事に限定されます。
基礎:・電気工学の初歩
・電気通信の初歩
技術:・端末設備の技術
・接続工事の技術
・ネットワークの技術
・情報セキュリティの技術
法規:・電気通信事業法
・有線電気通信法
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律
「AI・DD総合種」 近年合格率:17.4%
AI第1種とDD第1種の両方の工事の範囲を含み、工事担任者の全ての工事の範囲を包含します。
なお、AI第1種とDD第1種の資格者証を両方取得した場合は、申請により本資格者証を取得できます。
基礎:・電気工学の基礎
技術:・端末設備の技術
・総合デジタル通信の技術
・接続工事の技術
・トラヒック理論
・ネットワークの技術
・情報セキュリティの技術
法規:・電気通信事業法
・有線電気通信法
・不正アクセス行為の禁止等に関する法律
・電子署名及び認証業務に関する法律
次に、工事担当者の資格試験には、科目免除制度というものが用意されています。
①認定学校で認定に係る教育課程を修了された方
「電気通信技術の基礎」が免除
②科目合格の方
「基礎」「技術及び理論」「法規」のうち、1つまたは2つの科目が合格点を得ると「科目合格」となり、3年間、合格した科目の試験が免除されます。
③すでに工事担任者資格などを持っている方
工事担任者資格や、一定の無線従事者資格などを持っている方は、一定の試験科目が免除されます。
2. まとめ
ここまで、工事担当者の資格試験について詳しく説明して参りましたが、資格取得のためには情報通信に関する全般的な知識が必要になります。
認定学校に通っていた方は科目免除が適用されますが、それ以外の一般で資格取得を考えている方は、Amazonなどの通販で実践問題集などの教材は販売されているので、頑張って勉強していきましょう。
この記事へのコメントはありません。